SEO業界で20年以上の経験を積んできた者として、私たちは今、検索の歴史上もっとも大きなパラダイムシフトの瞬間を目撃しています

2025年8月21日、Googleが「AIモード」を日本を含む世界180の国と地域に拡大展開すると発表しました。これは単なる機能追加ではなく、検索という行為そのものを根本から変える歴史的転換点なのです。
2025年9月8日付で日本語もOPENとあるが、私の検索にはメニューが出てきません。

http://google.com/aimode ここにアクセスすれば使えます。が人によるようです。
本来なら検索した時にメニューで表示されるはずです。私は駄目なようでこんな表示なります。 悲

googleのヘルプには、「快適にご利用いただくためには、[ウェブとアプリのアクティビティ] をオンにして検索履歴を有効にしてください。この設定を有効にしていなくても AI モードにアクセスできますが、前回中断したところから検索を再開することはできません。」とあるのですが、ONにしていても駄目な人は駄目です。私は駄目でした。

検索から対話へ:AIモードが描く新しい情報取得体験

GoogleのAIモードは、これまでの「キーワードを入力してリンク一覧を見る」という検索体験を、「AIエージェントに直接質問し、具体的なタスクを実行してもらう」体験へと根本的に変革します。

CNET Japanの報道によると、AIモードではユーザーに代わって一連の検索を実行し、ディナーの予約や航空券・コンサートチケットの購入調査といった具体的なタスクまで担当できるようになりました。これはGoogle DeepMindの「Project Mariner」を基盤とする革新的な機能で、まさに私たちが長年待ち望んでいたエージェンティックAIの実現と言えるでしょう。

従来なら「レストラン 予約 新宿 和食」と検索し、複数のサイトを巡回して条件を比較していたものが、AIモードでは「4人で今晩8時頃、新宿で和食の予約を取りたい」と自然言語で質問するだけで、即座に空き時間をリアルタイム表示してくれるのです。
凄い進化です。

AI モードができる事↓↓

  • テキスト、音声、画像で質問し、AI による回答を得る。
  • トピックについてフォローアップの質問をする。
  • ウェブ上のさまざまなソースの情報を使って、トピックを詳しく調べる。
  • AI モードの検索履歴アイコン AI mode history を使って、中断したところから再開する。

AIモードはGeminiと何が違う?

AIモードの裏側はGeminiが動いています。ではGeminiとは何が違うのでしょうか?
密接な関係にありますが、提供される場所と目的が異なります。

Geminiとは

Geminiは、Googleが開発したマルチモーダルな大規模言語モデル(LLM)です。テキスト、画像、音声、動画、コードなど、複数の異なる種類の情報を統合的に理解し処理できるのが大きな特徴です。Geminiは、生成AIの頭脳にあたる部分で、ChatGPTにおけるGPT-4のような存在です。

AIモード(AI-MODE)とは

AIモードは、Google検索に統合された新しい検索体験の名称です。この機能は、Geminiをその中心的な技術として使用し、従来のキーワード検索とは異なる方法で情報を提供します。

AIモードとgeminiの違い

項目AIモードGemini
提供場所Google検索のインターフェース内専用のウェブサイトやアプリ
主な目的検索の進化版。質問に対する直接的な回答や、対話を通じて複雑なトピックを深く掘り下げること。チャットボット。文章生成、要約、翻訳、アイデア出し、コーディング補助など、幅広いクリエイティブなタスクに対応すること。
動作検索クエリを複数のサブトピックに分解し、同時に検索を実行する「クエリファンアウト」技術などを利用し、要点をまとめた回答を生成します。会話形式でユーザーの指示に従って様々なタスクを実行します。
特徴検索結果にAIが生成した回答が表示され、追加の質問を通じてさらに情報を深掘りできます。
元はGeminiと使っています。
クリエイティブなタスクに特化しており、より自由で柔軟な対話が可能です。


簡単に言うと、両方ともGeminiのLLMを使っており、出力物が変わるというところです。
ではなぜAIモードがつくられたかというと、大きな違いは広告が出る点です。結局Geminiの広告が出る版というところが近しいと思います。インターフェースから考えても、一時的な導入で終わる可能性を感じているのではと勘繰っています。

業界データが示すAI検索の破壊的インパクト

実際の数値データが、この変化の深刻さを物語っています。

株式会社キーワードマーケティングが2025年5月に実施した調査(対象:日本在住でWeb広告運用およびSEOに携わるマーケティング担当者325名)によると、2025年3月以降、AI Overviewの影響で約6割(61.9%)の企業が自然検索からの流入減少を経験しています。一方で、AIに引用されることに成功した企業の約2割(15.1%)は流入が増加しており、明確な二極化が始まっています。参照:キーワードマーケティング AI Overview影響調査

これほど短期間で検索トラフィックの構造が純粋に検索環境の相違だけで変化するのは私が20年間SEO対策を実施してきた中でも、2012年ごろに実施されたペンギンアップデートクラスの衝撃です。大きく違うのは、今回の場合順位は変わらず純粋な減少です。特に検索上位を維持していた企業ほど30%以上のトラフィック減少を記録しており、従来のSEO戦略の前提が崩れ始めていることは明らかです。
「順位が高い⇒流入数が多い」 が一般的でしたが 
「順位が高い⇒クエリにより想定の流入数が上下する」が一般的となります。

でも面白いもので、流入数は減ったけどCV数は、みなさん思った以上に変わっていないのではないでしょうか?

AI検索エンジンの台頭と検索市場の多様化

検索市場全体を俯瞰すると、Googleの独占状態にも変化の兆しが見えています。

特に注目すべきは、AI検索に特化したPerplexityの急成長です。同社は「AI検索エンジン」としてポジションを確立し、従来の検索とは異なるアプローチで情報提供を行っています。参照:生成AIで検索市場が大変革 Perplexityは検索結果に対して出典を明示しながらAIが要約回答を提供するという独自の検索体験を提供しており、月間40%成長という驚異的な伸びを記録しています。

また、MicrosoftのBing AIやGoogleのAI Overview、さらには各種AI検索特化サービスの登場により、検索市場そのものが多様化の時代に入っています。これらのサービスでは、従来の検索とは異なり、情報を「探す」のではなく「尋ねる」という行動パターンが定着しており、ユーザーの情報取得習慣そのものが変化していることを示しています。

検索行動の根本的変化

AI検索時代の最も重要な変化は、ユーザーの検索行動パターンです。

従来の検索では、ユーザーは「関連する情報があるページ」を見つけることが目的でした。しかしAI検索では、「質問に対する直接的な答え」を求め、その場で理解・納得することが目的となります。

これは「ゼロクリック検索」の加速を意味します。ユーザーがWebサイトを訪問することなく、AI コンテンツだけで満足してしまう現象が急速に拡大しているのです。

また、検索クエリ自体も複雑化・対話化の傾向を見せています。「SEO対策」という単発キーワードから、「来年度のマーケティング予算配分で、AI検索の普及を考慮したSEO投資の優先順位を教えて」といった文脈的で複合的な質問へと変化しています。

SEO業界への実務的影響

20年間のSEOコンサルティング経験から言えば、現在起きているのは単なる手法の変化ではなく、SEOという概念そのものの再定義です。

従来のSEO戦略の限界

これまでのSEOは以下の3要素を中心に展開されてきました:

  • キーワード調査と最適化配置
  • テクニカルSEO(HTML構造、内部リンク、サイト速度等)
  • オーソリティ構築(被リンク獲得、E-E-A-T強化)

しかし、AI Overview時代では検索結果の最上部にAI生成コンテンツが表示されるため、従来の1位〜10位という概念自体が意味を失いつつあります。参照:Google「AI Overview」の登場でSEOは何が変わった?

新時代のSEO戦略:LLMO(Large Language Model Optimization)

新しい時代のSEO戦略は、LLMO(Large Language Model Optimization)とも呼ばれる手法へとシフトしています。これは以下の要素を重視します。

1. AI引用最適化

  • 構造化された情報設計(FAQ、How-to、明確な見出し階層)
  • 引用されやすい文章構造と文脈の提供
  • 一次情報の明示と根拠の明確化

2. エキスパート性の可視化

  • 専門家の実名・プロフィール・実績の明記
  • SNSとの連携による実在性の証明
  • 独自調査やオリジナルデータの提供

3. ブランド想起の設計

  • 「なぜこの企業がこの分野に強いのか」という文脈の構築
  • ユーザーの記憶に残るブランドストーリーの発信
  • 複数チャネルでの一貫したメッセージング

新たな流入チャネル:ChatGPTとGeminiからのトラフィック

実際のデータを見ると、すでに新しい流入経路が確立され始めています。

ChatGPT Searchでは、2025年6月のアップデートにより、引用URLや詳細URLに「?utm_source=chatgpt」のパラメータが一部自動付与されるようになりました。これにより、Google Analytics 4でChatGPT Search経由の流入を明確にトラッキングできるようになっています。

私が観察している複数のクライアント企業では、ChatGPT経由の流入が直近6か月で倍以上に増加しており、特にFAQページ、専門記事、企業紹介ページが引用されやすい傾向にあります。

これは偶然ではありません。AIが「信頼できる情報源」として認識するコンテンツには、明確な特徴があります。

  • 情報の出典が明記されている
  • 専門性が担保されている
  • 構造化されて理解しやすい
  • 一次情報や独自の見解を含んでいる
  • そのWEBサイトのブランド力が高い

今後5年間の検索市場予測

2025年から2030年にかけて、検索市場は段階的に以下のように変化すると予測されます。

フェーズ1(2025-2026年):AI検索の浸透期

  • Google AIモードの日本語対応完了
  • 企業の30-50%でAI検索対応の検討開始
  • 従来SEOとLLMO対策の並行実施が標準化

フェーズ2(2027-2028年):市場の二極化

  • AI引用に成功する企業とそうでない企業の格差拡大
  • 検索トラフィックの40-60%がAI経由に移行
  • 広告費の配分見直しが業界全体で進行

フェーズ3(2029-2030年):新検索生態系の確立

  • 音声・マルチモーダル検索の本格普及
  • パーソナライズされたAIエージェントが主流化
  • 「検索」という概念自体の消失とエージェント型情報取得の標準化

企業が今すぐ取るべき5つの対策

20年間のコンサルティング経験から、企業が今すぐ着手すべき具体的対策をご提案します:

1. 現状分析とベースライン設定

  • Google Analytics 4でのAI流入チャネル設定
  • 主要キーワードでのAI Overview表示率調査
  • 競合他社のAI引用状況分析

2. コンテンツ構造の最適化

  • FAQ形式での情報整理
  • 明確な見出し階層と論理構造
  • 引用されやすい200-300文字の要約文作成

3. エキスパート性の強化

  • 執筆者プロフィールの充実
  • 業界での実績・資格の明示
  • 独自調査データの定期発信

4. ブランド想起戦略の構築

  • 企業の専門性が伝わるストーリー設計
  • 「なぜこの会社なのか」の文脈説明
  • 複数媒体での一貫したメッセージング

5. 新指標でのKPI設計

  • 検索順位に加えてAI引用率の測定
  • ブランド想起調査の定期実施
  • 生成AI経由のコンバージョン率分析

結論:変化を恐れず、本質を見極める

AI検索の到来は、確かに破壊的な変化をもたらしています。しかし、これまでSEO業界で培ってきた「ユーザーファースト」「価値ある情報の提供」「専門性の追求」という本質は、むしろAI時代でこそより重要になっています。

GoogleのCEOサンダー・ピチャイ氏も、「AI Modeがウェブへトラフィックを送ることを製品の方向性として非常に重視している」と明言しています。つまり、AIは検索を代替するのではなく、より効率的で価値のある情報発見を支援するツールとして進化していきます。

重要なのは、「検索順位で見つかる企業」から「AIに引用され、ユーザーに想起される企業」への転換です。この変化を恐れるのではなく、新しい時代のマーケティング機会として捉え、戦略的に取り組む企業こそが、次の10年を勝ち抜いていくでしょう。

AI検索革命は、まだ始まったばかりです。今こそ、未来の検索生態系で勝ち残るための基盤づくりに着手する時だと思います。